Negishi Takuhei

根岸卓平の演奏日程と、その後記

【後記】2017.11.08(水) 「二つの窓」於 梅田 ハードレイン

≪出演≫
矢野汕骨
三好真
ドーラ
根岸卓平

移住まえ最後の演奏でした。

あまり気負わず、いつも通りの演奏ができればいいなと思いパフォーマンスをしました。前に共演した浜谷隼輔さんと話したときに、右指が弦にふれる場所や、その強弱で、当然だけど音は「変化する」という話をしていて、意識しながら披露したのだけど、どうだったのだろう。

顔の表情を含めての、「頭」を使った表現。さらにそれも含めた、ひろい意味での「身体」を使って歌っている、ということに触れた感想が多くて、とてもうれしかった。音楽は精神であり、それを伝える媒介としての身体。この1年、とくに意識して取り組んでいたので良かった(あとMCが快調だったので、とてもご機嫌でした)

共演の方々もよかった。氷をやぶらないよう歩く、そんな姿に似ているドーラさんから始まり、二番手の三好真弘さんは、都会ではない場所を都会的な感性で切り取っていた。声や恰好もよかった。三好さんの歌に出てくる土地に行くと、「うた」にさらに同期できるんだろうか。とても素晴らしかった。三番手はじぶんで、四番手は矢野仙骨さん。普段の矢野さんの様子とは違って、歌の中ではちょっと"クサい男"を演じているようで、かっこよかった(私はそういうひとが好きだ)。うしろに大阪湾が見えたような気がした。俳優だった。

お見送りもかねて、たくさんのひとが見に来てくれた。ブッキングのライブで、キャッシュバックからのギャランティを貰ったのは初めてだった(こんなにカタカナを使ったのも初めて)。ずっと見てくれてるひと、職場のひと、よくごはんに行くひと、呑みに連れてってくれるひと、じぶんもそのひとの音楽のことが好きなひと、来れないけれど連絡をくださったひと。みんなそこにいた。とてもよかった。

ハードレインには20歳そこそこの、演奏をしたてのころから出ていた。ギターを持って、半年とかのころで、ひととの距離感も今よりよくわかっていないころだったし、じぶんのことでアタマがいっぱいな時期だった。だからハードレインのスタッフさんの顔を見るだけでも、ちょっと恥ずかしい。もう8年も前のはなし。でもその頃から、メンツは変わっていない。しいて言うなら、SiMoNさんが増えた、くらいだろうか。

じぶんはほとんどライブ演奏をしていない時期もあったし、数年ほど、演奏する側としても観る側としても、ライブハウスから遠ざかっていた。だけど"Gossip Folks"を出して、もっと人前に立ちたいな、と思っていた時に、SiMoNさんから「YouTubeみました」「ハードレインに出ませんか」というメールを頂いて、それからまた、出るようになった。

SiMoNさんはblgtzのひとで・・・というはなしは、この記事にゆずるとして、そんなこんなで戻ってきても加納さんもノンちゃんもPAさんも、もちろんSiMoNさんも、とても温かく出迎えてくれた。

東京にいきます、といったとき、加納さんは「もっと早くてもよかったかもね」と言ってくれて、よくわからないけれど、すごく嬉しかった。ライブハウスに戻ってきてからのじぶんの動きを見ててくれてたんやろな、と思った。ノンちゃんとは、この日はノンちゃんが今ハマっている南京玉すだれとか森田さんのはなしをしていて、あんなこともあったねぇ、なんて話しつつ、最後のほうで、でもまたかえってきてええからな、と言ってくれて、そうだよなぁと思った。森田さんのトリビュートのときに見た、モノマネもそうなのだけど、回りをよく見ているひとなんだよな。

そろそろ帰ろうかなと思っていたときに、PAさんに呼び止められて、あなたはどうして東京にいくの。それはやっぱり、音楽のためなの、と訊かれた。

率直に、音楽のためです、でも音楽だけでなく、物書きとか詩とか、そういうことを中心にした生活を送りたいと思ったので、それなら東京がいいと思いました、と答えた。すると、あなたは絶対売れないよ、と彼女は言った。

そういうことじゃないねんけどな、と思っていると、続けて、あなたは売れない、だけど「それで苦しんではならない」といった、

PAをしていると仕事に集中したいから、なるたけ音楽の内容とか、耳には入らないようにしている。だけど、あなたの「うた」は、そうして律していても、ふとしたタイミングで急に言葉が、声とギターと一緒になって、飛び込んでくる。塊となって、投げ込まれてくる。そうすると、なんでこの言葉なんだろう、と私は思う。なんでいま、この言葉が、やってきたのだろう。すると頭から、離れなくなる。それらは、不可解なものが多い。私なりに推測をするしかないのだけど、推測すればいつも、フィクションだとしたら、どうしてこんなことを歌いたいんだろうと思うし、ノンフィクションだとしたら、何があったらこんな歌を作るんだろうと、思う。私そのものが、揺らいでしまう、

それはあなたの歌の「怖ろしさ」だと思う。戻ってきてからのほうが、それは強い。表現力が上がったとか、そういうこともあるのだろうけれど。

最初のころはどうしても、フェミニンな見た目もあって、エログロの要素もあったしで、なんとも思っていなかった。そういう音楽は、それっぽいファンとかがそれなりにいて、だから最初観たときは、まぁそういう音楽人生なんだろな、くらいに思っていた。先のことまで、読める音楽だった。だけど、あなたはエログロを振り切って帰ってきた。わたしは絶対「いま」のほうがかっこいいと思う、

だけど「ひっかかり易い」部分を自ら捨てたわけでしょう。それにあなたは、正解がわかっているのに、すぐ「ずらす」。そこに、落そうとしない。音楽の内容しかり、「さざなみ」のエッセイしかり。誤魔化すのも、はぐらかすのも、上手い。

その上手さが、「すごい」のだけど、それがわかるひとは少ない。だからといって、じぶんを悔いたり悲しんだり自暴自棄になるのは、お門違いだ。それがしんどいことなのはわかっているけれど。それでも、歌い続けてほしいし、そうするしかない。

そんなこと、わたしが言わなくても、あなたみたいな「うた」を歌っているひとのほうが長く演奏を続けるし、続ける分、たくさんの味方をつける。年を重ねることで豊かな「うた」を歌うことも知っている、

だからあなたは、歌い続けるしかない。

どんなふうに応えたかは、覚えていない。雨上がりの風が、すこし気持ちよかった。

本当にありがとうございました。

f:id:uncowakigerecords:20171121104654j:plain


写真はモツさんが撮ってくれたUncoWakigeRecords Tee。Mが4枚、Lが2枚あります。引っ越し代金に充てたいので、買ってよ。

購入はこちら→木の鍵


1.鳳 2.架空 3.骨と燈 4.実を吸うて 5.千年 6.一億の夜